一発逆転の不用品 回収
地球温暖化対策として提案される施策のほとんどが、何らかの既得権益を侵害するという点もまた、対策へ向けての合意形成を阻む一因として見逃せない。
たとえば、世界的な規模で化石燃料の消費削減を実行しようとすれば、中東の石油輸出国やオーストラリアのような石炭輸出国が反対するのは、当然のこととしてうなずける。
運輸用エネルギー消費を抑制するために、貨物輸送をトラックから鉄道にシフトさせようとすれば、むろんトラック業界が大反対をする。
要するに、人間の経済活動のほとんど何もかもがCO2の排出を伴うがために、いかなるCO2排出削減策であれ、何らかの経済活動を抑制・縮減することにならざるを得ないからである。
しかしその半面、CO2排出削減策により利益を授かる産業界もあることを見落としてはなるまい。
このように地球温暖化問題は、それが及ぼすであろう被害の予測についても、またそれへの対策の選択についても、合意形成がはなはだ難しいという意味で、二十一世紀に向けて人類が抱える極めつきの難問の一つなのである。
この難問を克服することこそが、私たち現世代に課せられた重い課題であると同時に、二十世紀型工業文明の見直しを人類に迫るという意味で、地球環境問題は、すぐれて歴史主義(ヒストリシズム)的な問題なのである。
またそれは、自然科学、社会科学、人文科学、そして工学が連携して取り組まねばならない、すぐれて学際的な問題でもある。
世界気象機関(WMO)の「一九九七年版年次報告」を参照しながら、現状をおさえておこう。
一九九六年の全世界の地表平均気温は、平年(一九六一年から九○年の平均値)よりも○・二二度(摂氏、以下同様)高く、一八六○年に観測が始まって以来八番目の高温を記録したとのことである。
ちなみに観測史上最高気温(平年を○・三三度上回る)を記録したのは、日本列島を猛暑が襲った一九九五年のことである。
また、年次報告は「一九七九年以来、一八年間連続して異常高温が続いている」と言う。
WMOが「異常」というのは「たかだか三○年間に一度の頻度でしか起きない」ことを意味する。
私たちがつねひごろ実感する温暖化は、地球的な規模での気象観測によっても裏づけられているのである。
一八年間連続で異常高温が続いたという事実は、いったい何を意味するのであろうか。
近年の異常高温が果たして「たまたま」のことなのか、それとも「たまたま」ではない、すなわち何らかの確固たる理由があってのことなのかが、まずはじめに問われなければなるまい。
近年の異常高温が「たまたま」のことでないのだとすれば、何らかの理由による地球温暖化が現在進行中であるとを認めざるを得まい。
毎年の平均気温がランダムに変動するものと仮定すれば、「三○年に一度しか起きないことが一八年間続けて起きる」確率は函・認×ご‐雪なのだから、過去一八年間に私たちが経験したことは「めったに起きない」ことだったということになる。
そこで「めったに起きない」ことが、たまたま起きただけということで話を終わりにするのか、それとも平均気温上昇が認められない「温暖化の進行はあり得ない」との暗黙の前提を疑うのか、そのいずれかである。
統計的仮説検定の考え方に素直に従えば、右の確率が小さい(普通は五%以下を「小さい」という)ことを理由に後者が支持される。
気温が上昇の傾向に転じたのは一九一○年前後のことであり、以来、約八五年のうちに気温は概ね○・六度ほど上昇し地球温暖化は二酸化炭素(CO2)に代表される「温室効果ガス」の大気中濃度の上昇に起因するといわれるが、まずはじめに温室効果とは何かについて簡単に述べておこう。
自然界にもともと存在する温室効果ガスとしては、CO2、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N20)、オゾン(03)、水蒸気等がある。
また、人工の温室効果ガスとしてはフロン(クロロフルオロカーボン類の総称、CFCs、HCFCs、PFCs)、六フシ化硫黄(SF6)等がある。
産業革命以降に人為的に排出された温室効果ガスによる地球温暖化への直接的寄与度(一九九二たことがわかる。
また、一九七九年以降の異常高温起きている。
太陽光線は大気圏を透過して地表にとどき、地表面を温める。
温められた地表面は大気中に赤外線を放射して冷えてゆく。
夜になると太陽光線はとぎれるが、地表からの赤外線(熱)の放出は続くから地表の温度は低下する。
とはいえ、実際に体験する地表の気温の低下はさほどではない。
一日の最高気温と最低気温の差は、地表全体を平均すれば、せいぜい一五度ぐらいのものであろう。
なぜ夜間の放熱がそれほどでもないのだろうか。
太陽光線は通すけれども、赤外線(熱)を吸収する気体が大気中に存在するからである。
こうした自然現象を、光は取り入れるが熱を逃がさない温室にたとえて、赤外線を吸収する気体のことを温室効果ガスと名づける。
もともと大気中に温室効果ガスが含まれているからこそ、地表の昼夜の温度差はさほど大きくなく、地球上に多様な生物が生息できるのである。
先にいくつかの温室効果ガスを列挙したが、それらの温室効果の程度はガスによってまちまちである。
単位重量当たりのガスの温室効果を比較するために、「地球温暖化係数」が用いられる。
それぞれのガスのGWPは、温室効果を見積もる期間の長さ、当該ガスの大気中での寿命、当該ガスが吸収する赤外線の波長などによって決まる。
したがって、GWPはあくまでも相対的かつ暖昧な尺度であることを強調しておかねばなるまい。
期間を一○○年としたときのGWP(CO2を一・○とする)は、メタンが約二○、亜酸化窒素が約三一○である。
もともと動物は呼吸によりCO2を排出するのに対し、植物は光合成によりCO2を固定する。
人間が火を発見してから後は、植物を燃焼させることにより、人為的にCO2を発生させるようになった。
とはいえ、産業革命以降、人間が石炭を燃焼させて蒸気機関を運転するようになるまでは、大気中のCO2濃度は定常状態二八○ppmV(体積一○○万分率、以下ppmと記す)に保たれていた。
要するに、地球上のCO2の収支がバランスしていたのである。
産業革命以降、石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料を動力源として燃焼させるようになったため、大気中のCO2濃度は着実な増加傾向に転じ、一九九四年現在、三五八ppmにまで達した。
人間の経済活動に伴うメタンの発生源は、農業(家畜の反謁、ふん尿、水田など)、廃棄物(埋め立てなど)、エネルギー(燃料の燃焼、石炭や天然ガスの採掘時の漏出)等である。
また、亜酸化窒素の発生源は、燃料の燃焼、化学工業プロセス、施肥などである。
CO2と同様、いずれのガスも人間の経済活動に伴い発生するものであり、大気中のメタン濃度は産業革命以前に七○○ppbv(体積一○億分率、以下ppbと記す)だったのが、現在では一七二○ppbにその他の気候変動要因気温を変化させる要因は、温室効果ガスの増加以外にいくつもあり得る。
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